<政治・社会>う~ん、書くことがあまりない

実は、このエントリを書くために、大嶽秀夫氏の『日本型ポピュリズム』を読んでいたら、書きたいことがだいたい書いてあったという・・・orz
しかし、この本は2年も前に出版されたのだが、その「あとがき」は今こそ多くの人々に読んでもらいたい警句に満ちている。そこで、長くなるが、引用してみることにしたい。(p.239-242)

今日の日本政治にとって最大の不幸は、「改革派」が、常にマクロ経済的には誤った政策を掲げ、政権をとったとたんにそれを推進してきたことにある。そのため立ち直りかけた景気回復に冷水を浴びせ続け、「日本経済の失われた10年」の最大の原因を作った。皮肉にも、いわゆる「抵抗勢力」の方が、マクロ経済的にはより正しい政策を提唱してきたし、彼らが「改革政権」のマクロ経済政策上の失敗の被害が致命的になることをそのたびに阻止してきた。むろん理想論をいえば、財政出動を続けながら、無駄や利権の温床となる公共事業などの内容を変革することは不可能ではないし、多くの経済学者や政治学者はそれを提唱している。しかし、日本経済の現状からいえば、それを担う政治勢力はこれまでのところ登場してこなかったし、何よりも政治的にこの二兎を追う戦略は、あまりに理想論すぎる。換言すれば、景気刺激の効果があって、かつ将来にっとて有益な公共事業を求めるのは、欲張りすぎで、リチャード・クーの言葉を借りれば、「贅沢」というものであろう。

こうして、一般化していえば「政治的」課題の解決の期待を担って登場した改革派は、いずれもマクロ「経済」運営で失敗し(あるいは充分な成果を上げられず)、いずれも政権獲得後1年を経ずして統治責任から抵抗勢力の経済運営上の議論を受け入れることを余儀なくされた。その結果、有権者の失望をかって、敗退していったのである。そして抵抗勢力の経済政策が経済危機の成功の回避に成功しはじめると、それに伴って増大する政治的スキャンダルや目に余る財政の無駄がマスメディアを賑わし、再び「改革」への声が沸き起こり、それに応えて、新たな「改革者」が登場してきた。これこそが、この10年の日本政治の「期待と幻滅のサイクル」を生んでいる構造的要因なのである。
・・・
1990年代に政治の「道徳主義的」解釈が蔓延した結果、今では、国民にとって痛みを伴う「苦い」政策こそが、「改革」の正しさを表し、「甘い」政策は国民の歓心をかうだけの「まやかし」の政策であるとの評価が、マスコミや世論に定着してしまった感がある。そうした「道徳的禁欲主義」によって政策を判断することを止めない限り、以上のサイクルを克服し、「失われた10年」の経験を生かして、深刻な不況という日本にとっての最大の課題を解決することは不可能である。

マス・メディアによって、あまりに「道徳主義」化し、善玉・悪玉二元論に固まってしまった有権者の判断を、成熟した大人の「現実主義」によって、克服すべきときがきているというのが、筆者の判断である。90年代日本は、防衛問題については、徐々にではあるが「理想主義的」「道徳主義的」平和論たる非武装主義を克服し、「現実主義」化していくことに成功した。経済問題についても、それができないはずはあるまい。

景気回復の手段として金融政策が取り上げられず、財政政策に関する言及があるだけなのが気にはなるが、多くの政治学者の水準を遥かに越える経済認識であることには間違いない。
ただし、最後の「現実主義」については、僕は「現実主義」をくさしたエントリを書いたこともあり、「理想主義」と「道徳主義」とを同列に並べることにはあまり同意しない(おそらく、他の政治問題に関して、僕と大嶽氏の間には様々な見解の相違があることが予想される)。僕は理想を掲げることの必要性は認めるが、道徳は好きではない。

しかし、それを除いても、大嶽氏のこの言葉の説得力を認めないわけにはいかない。小泉内閣の今回の解散は、大嶽氏の観点からすれば、「抵抗勢力」という経済的破綻へのブレーキを外すことに他ならない。外需に助けられて景気回復の兆しが見えるものの、日本経済は未だ深刻な状況にある。それを国民が甘受しているの背景は、「苦い」政策を称揚するマスコミの存在があることは否定しえない。むしろ、国民の多くは、経済的破綻を防いできた「抵抗勢力」こそが、その「苦さ」をもたらしているものと誤認しているのではないだろうか。

無論、僕は「抵抗勢力」を全面的に支持するわけではないが、「改革派」が何のブレーキもなく改革を遂行するようになる状況を考えるとき、背筋が寒くなるのを感じる。「改革」によって再び経済的破綻の危機が見えてきたとき、「それは『痛み』がまだまだ足りないからだ」「抵抗勢力が未だに改革の邪魔をしているからだ」といったマゾヒスティックな言説の虚妄を、今度こそ国民は見破ることが出来るだろうか。
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  by seutaro | 2005-09-10 01:20 | 政治・社会

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