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<ネタ>ある現実主義者の1日

(いうまでもなく、これはフィクションです)

朝、目が覚めると、現実主義者Aは妻のつくる朝食を食べながら、いつものように新聞を読む。
「また、アフガニスタンでアメリカ軍の誤爆か・・・。ま、これもしょうがない犠牲だよ。戦争に犠牲者はつきものさ。」
それを聞いた妻がいつものように口を挟む。
「でも、そんなこと言っても、間違って殺されちゃった人は可哀想じゃない?」
Aはため息をつきながら、答える。
「また、それか。そんな理想主義は現実じゃあ通用しないんだよ。理想主義者は、10人救おうとして10人全員を殺してしまう。たとえ3人死んでも7人助けるのが、現実主義ってやつさ。」
「でも、その死ぬ3人のほうになる人はたまったもんじゃないわね。」
「そういう感情論を越えて判断するのが現実主義の政治だよ。」
妻はちょっとうんざりしたような感じで、最後に一言言い残して、食器を洗いに台所に立つ。
「なんか、すごく偉そう。何様ってカンジ。自分ひとりだけが現実を理解して、高いところから下々を見下ろしてる気分になってんじゃないの。」
身支度を終え、会社へと出勤するA。途中、ホームレスのおじさんがダンボールの家に包まって寝ているのが目に入る。Aは思う。
「ま、これも弱肉強食の社会なんだからしょうがない。無能なやつは落ちこぼれる。それが現実ってもんさ。そもそも、日本は弱者に甘すぎなんだよ。社会主義はそろそろ止めないと。」
会社につくと、Aはさっそくパソコンの前に座り、部下の昨日の出勤・退出時間と業務日誌とを確認する。どうも、Bは仕事の効率があまりよくないようだ。また、Cは勤務時間が終わるとすぐに帰宅しているようだ。そこで、Aは課全体に向けて、Bの効率が悪いこと、Cの勤務態度が良くないことを指摘するメールを書く。Aは思う。
「ま、一種の見せしめだよ。人間、こういうプレッシャーがないと働かないんだよな。」
しばらくすると、部下のDが文句を言ってきた。
「こういうやり方だと、課全体のやる気が失せてしまいます。」
Aは答える。
「私の仕事は管理をすることだ。人間、甘やかしておくとすぐに怠けるからな。管理が必要な生き物なんだよ、人間は。」
仕事を終え、家に着くA。すると、彼の小学生になる息子が傷だらけになって、テーブルに座っている。Aはたずねる。
「どうした」
すると、妻が代わりに答えた。
「この子、クラスでいじめられているF君をかばって、一緒に殴られちゃったんだって。」
Aはため息をついて言う。
「お前、馬鹿だなぁ。相手はグループなんだろ?敵うわけないじゃないか。一緒になっていじめろとは言わないが、放っておきゃいいんだよ。それが現実的な世渡りってもんさ。」
妻は気色ばんで言う。
「そういう言い方はないんじゃない?この子、立派よ。」
「それが理想主義だってんだよ。強い側につくってのは世の中の常道だよ。話は大きくなるけど、戦前の日本だってイギリスとかアメリカとか強い側にずっと立って、一緒になって中国をいじめてりゃ、あんな悲惨なことにはならなかったんだよ。」
そして、Aは息子に向かって言う。
「いいか、今度、お前を殴った連中に会ったら謝っとくんだぞ。楯突いてごめんなさいってな。」
一日が終わり、Aは床に就く。布団の中でAは今度の人事について考える。次に部長に昇進するためには、隣の課のGがどうしても邪魔になる。Aは数日前、自分の部下のHがGと一緒にホテルに入るところの写真を手に入れていた。この写真をばらまけば既婚者のGはコースから外れるはずだ。
「明日は朝早く出社して、この写真のコピーを目立つところにでも貼っとくか。Hは会社を辞めさせられるかもしれんが、俺の出世のためさ。ま、これが弱肉強食ってことなんだよな」
そうこう考えているうちに、Aは眠りに落ちていったのだった・・・。

  by seutaro | 2004-10-12 20:21 | ネタ

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