<政治・社会>安倍首相辞任

 先日まで指導しているゼミの合宿に行っていた。

 夜のコンパの最中、唐突に学生が「そういえば、安倍首相、辞めましたね」と言ってきた。わけのわからない僕は思わず、「へっ?」と言い返してしまった。その日はテレビも見ないで本を読んでいたので、午後から始まった辞任騒動を全く知らなかったのだ。

 「え、知らなかったんですか?」と妙に嬉しそうな学生。そりゃそういうことだって、たまにはありますですよ。

 それはともかく、僕は安倍首相が好きではなかった。彼が首相に就任してからしばらくは、何となく憂鬱な日々を過ごしていた。彼が言う「美しい国」なんて全然好きじゃなかったし、その背後に見え隠れするイデオロギーや歴史認識も大嫌いだった。(経済政策はそれほど悪くはないと思っていたが…)

 とはいえ、こういう形での辞任というのが嬉しいかと聞かれると、素直に喜べないのも確かだ。おそらく今回の辞任で彼が首相として再登板する芽は完全に絶たれたし、それはそれで喜ばしく思ってしまう自分もいる。が、とりわけ彼の閣僚の「不祥事」に関して、彼の任命責任だとか、そういうのを指摘する論などを見ると、全くもって同意できない。

 今回の彼の内閣における「政治とカネ」の問題など、かつてであれば全く問題にならなかったようなことのはずだ。おそらく、「政治とカネ」について、クリアすべきハードルが異常に上がりすぎてしまったがゆえに、ちょっとでも隙があれば簡単にマスコミのターゲットになってしまうのだろう。

 もちろん、「政治とカネ」についてクリーンであったほうが望ましいとも思うが、政治手腕よりもそういう「クリーンさ」ばかりが重視されてしまうと、政治家は小粒になる一方な気がする。あるいは、親からしっかりとした地盤を受け継いでいるために無理をする必要の少ない世襲議員か、知名度だけはあるタレント議員ばかりが残ることになるのではないか。

 たとえば、賛否はあれど、田中角栄がスケールの大きい政治家であったことを否定する人は少ないだろう。田中角栄が手がけた議員立法は33件にのぼり、土建国家の根幹を築き上げたのは彼の手腕によるところが非常に大きい。パフォーマンスだけの小泉前首相とは異なり、田中角栄は実際に「動く」政治家だった。

 しかし、もし仮に田中角栄が現在の若手代議士だったとして、彼が首相の座に上り詰めることはおそらく不可能だろう。ひょっとしたら議員に留まることすら難しいかもしれない。現在の「政治とカネ」についてのハードルを田中角栄がクリアすることはまず無理だ。

 無論、角栄流の公共事業依存型国家が現在の日本の足かせになっていると考える人も多いだろうが、ではそれに代わる新たなシステムを作り出せるような政治家が現在どれだけいるというのか。「清濁併せ呑む度量」なんて発想はすっかり影を潜めてしまった。

 話を戻せば、安倍内閣の「不祥事」は、カネの問題であれ失言の問題であれ、あまりにも揚げ足取りが過ぎたように思う。「ナントカ還元水」とか、そんな話はもうどうでもいい。

 次の首相が誰になるのかは知らないが、そういう些細な揚げ足取りに終始するのではなく、野党もマスコミも、もちっと大きなスケールでの批判を展開してほしいと思う。
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  by seutaro | 2007-09-15 08:00 | 政治・社会

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